酒を断った友へ　　　　　　（友人）Ｋ・Ｏさん

・・・三十年も前

この僕は　酒に捉われ

溺れ　のたうちまわっていた

近くの人から　遠くの人から
この僕へ無数の手が　差しのべられた

息絶え絶えに　喘ぎ悶えていた　この僕は　
よろめきながら　立ち上がり　震えながら　歩き始めた

近くの人や　遠くの人は
黙って手を握って　この僕に　笑いかけた

 

・・・一年前の今日　この僕の　若きあの友が
この僕のように　酒に捉われ　溺れていた

傷は深く　のたうちまわりながら
失意の底に　横たわっていた

 

この僕は知っている　若きあの友の　苦しみを
夢を　希望を　失うことが
どれほどに寂しく　悲しく　苦しいことかを…

 

・・・三十年ほど経った今日　
この僕は　まだまだ　不自由だけれど
走り　飛び　笑うことができる

夢がある　希望がある
きのうに続く今日がある　今日につながる　明日がある

 

・・・一年前の今日　酒を断った　若きあの友へ
病で死を待つ　この僕に　何が出来るのだろう

ただオロオロと　うろたえるだけなのか…

 

いや　違う　言葉を贈ろう　笑顔を運ぼう　
そばに立って　手を握ろう

 

若きあの友は　僕の知っている誰よりも　スゴイやつだから
もうすぐ　元気に笑うだろう

 

同じ病の　若きあの友よ　知ってほしい

この僕は　いつも傍にいる

手をつなごう　一緒に泣こう
そして　もうすぐ　笑おう
一緒に立って　歩いて　走り　飛ぼう

 

・・・この僕は　若きあの友を　ずっと忘れない