原因・発症の要因

アルコール依存症の原因は多量飲酒です。しかし、多量飲酒者がすべてアルコール依存症になるわけではありません。当初は同じように飲んでいても、ある人はアルコール依存症になり、ある人はなりません。この違いはどこからくるのでしょうか。

双生児による遺伝研究などから、アルコール依存症の原因の50~60%は遺伝要因、残りが環境要因によると推定されています2)。同じように飲酒していても、これらの要因をもつ場合にはアルコール依存症になりやすいわけです。
この要因の中で、環境要因は複雑で、必ずしも意見の一致をみていません。しかし遺伝要因については、以下のようにいくつかの信頼に足るものが明らかになってきています2)。 遺伝要因としてはまず、アルコール依存症の防御因子として働いているアルコール代謝酵素の遺伝子多型を挙げる必要があります。図3のように、消化管から吸 収されたアルコールは、アセトアルデヒド、次いで酢酸に酸化されます。アセトアルデヒドをおもに酸化する2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)には、点 突然変異により低活性型および非活性型が存在します。これらのタイプは、飲酒後に高アセトアルデヒド血症を引き起こし、顔面紅潮、心悸亢進、頭痛などのい わゆるフラッシング反応を引き起こします。この不快な反応のために、低活性型・非活性型ALDH2は、アルコール依存症の強力な防御因子になっています2)。 一方、アルコール依存症の発症促進要因としては、アルコールに対する低反応性、つまり「酒に強い」ことが挙げられます。上記のALDH2の問題とは別の原 因でも「酒に強い・弱い」は存在します。これはおもに神経細胞の受容体等の遺伝的差異によると考えられています。また、脳波や事象電位でとらえられる神経 の活動亢進状況も、アルコール依存症の危険要因とされています。 最後に、反社会性、多動性などの性格特性も危険要因とされていますが、これには遺伝以外の要因も関係していると考えられています。

 

 

体内のアルコール分解プロセス

 

 

【参考文献】
2) 樋口 進: アルコール依存: 生物学的背景. 松下正明, 加藤 敏, 神庭重信(編): 精神医学対話. 弘文堂, pp855-871, 2008.

 

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