最高で懲役20年――「脱法ハーブ」吸って交通事故

「罪の重さ」はどれくらいか?

 

薬物の副作用は、摂取した本人だけでなく他人の人生まで壊してしまう

 

 

 

「脱法ハーブ」をめぐる事件や事故が絶えない。624日夜には、東京のJR池袋駅近くの路上で、乗用車が歩道に突っ込み、歩行者1人が死亡、7人が重軽傷を負う悲惨な事故が起きた。運転していた37歳の男性は自動車運転死傷行為処罰法違反(過失傷害)の疑いで、警視庁に現行犯逮捕された。

報道によると、男性は警察に対し、「運転前に車内で脱法ハーブを吸った」「運転している途中から(事故後に)警察官に声をかけられるまで全く記憶がない」と供述しているという。事故当時、意識がもうろうとした状態だった疑いが強まり、626日には自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)の容疑で送検された。

脱法ハーブは幻覚や意識障害を引き起こす作用がある。今回、現行犯逮捕されたときの容疑は「過失傷害」だったが、送検時には「危険運転致死傷」に切り替わった。脱法ハーブを吸って事故を起こした場合、罪は重くなるのだろうか。交通事故にくわしい谷原誠弁護士に聞いた。

●「危険運転致死傷罪」とは?

「幻覚や意識障害を引き起こす覚せい剤や脱法ハーブを吸って自動車を運転すると、正常な運転が困難になったり、支障が出たりします。

そこで、今年5月に施行された『自動車運転死傷行為処罰法』では、薬物の影響で正常な運転が困難な状態で自動車を運転し、交通事故を起こした場合、『危険運転致死傷罪』として20年以下の懲役が科されることになりました」

弁護士はこう説明する。懲役20年というのは、ずいぶん重い処罰といえそうだ。

「また、薬物の影響で、正常な運転に支障が生じる『おそれがある』場合でも、その状態で運転を始めた結果、事故を起こした時に正常な運転が困難な状態に陥っていた時は『準危険運転致死傷罪』として15年以下の懲役となります。

目が回ってしまうような、明らかな危険運転の認識がなくても、注意力や判断能力、操作能力が相当低下している状態で運転し、結果的に正常な運転が困難な状態での事故であれば、罪になりうるのです」

いずれにせよ、薬物を使って事故を起こした場合、かなり厳しい刑罰が待っているということだ。

●単なる不注意による事故よりも「刑罰」が重い

「脇見など単なる不注意による通常の交通事故については、『過失運転致死傷罪』として懲役7年以下となっています。それに比べると、薬物を使用した場合は懲役20年以下と、刑罰が格段に重くなっています。

これは、脱法ハーブを含めて、薬物を摂取して自動車を運転すること自体の危険性を重く考えた結果でしょう」

また、薬物以外にも危険運転として飲酒運転が思い浮かぶが、どんな違いがあるのだろうか。

「飲酒の場合も薬物と同様です。度を超える飲酒の場合、酩酊状態になり、正常な運転が困難になったり、支障が生じたりします。

その場合も酔いの程度により、薬物と同様に『危険運転致死傷罪』や『準危険運転致死傷罪』で重く処罰されることになります」


弁護士はこう述べ、注意を促していた。

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